膝関節置換術(TKA)後の膝伸展筋力の推移

膝関節置換術(TKA)は、膝の重度の関節炎や損傷に対する一般的な治療法である。しかし、術後のリハビリテーションと筋力回復は重要な課題である。ここでは、TKA後の膝伸展筋力の回復について記す。

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膝伸展筋力の推移

術後の具体的な数値

  1. 術後3日目:
    • 最大随意収縮力(MVS)は術前と比較して約62%減少(効果量(ES)= -2.65; 95%信頼区間(CI)= -3.85から-1.46)。これは、手術による急激な筋力低下を示している。
  2. 術後14日目:
    • MVSは術前の値よりも約50%低い(ES = -1.77; 95% CI = -2.13から-1.41)。筋力は徐々に回復し始めるものの、依然として大幅に低下している。
  3. 術後1ヶ月:
    • MVSは術前の値よりも約50%低い(ES = -1.47; 95% CI = -2.01から-0.94)。リハビリテーションの効果が現れ始める時期である。
  4. 術後1.5〜3ヶ月:
    • MVSは術前の値よりも約30%低い(ES = -0.38; 95% CI = -0.60から-0.17)。筋力はさらに回復し、日常生活の動作が改善される。
  5. 術後6ヶ月:
    • MVSは術前の値よりも約20%低い(ES = 0.28; 95% CI = -0.02から0.59)。筋力はほぼ術前のレベルに戻るが、完全には回復していない。
  6. 術後12ヶ月:
    • MVSは術前の値よりも約10%高い(ES = 0.77; 95% CI = 0.30から1.24)。長期的なリハビリテーションの効果が現れ、筋力が術前を上回ることがある。
  7. 術後24ヶ月:
    • MVSは術前の値よりも約60%高い(ES = 1.64; 95% CI = 1.37から1.92)。筋力は大幅に改善され、術前の状態を大きく上回る。
  8. 術後60ヶ月:
    • MVSは術前の値よりも約70%高い(ES = 1.68; 95% CI = 1.40から1.96)。長期的なリハビリテーションの成果が最大限に発揮される。

影響因子

  • 年齢:
    • 年齢が高い患者は、術後のリハビリテーションにおいて筋力回復がより良好であることが示されている。これは、年齢に伴う筋力低下が元々少ないためと考えられる
  • 性別:
    • 女性は男性よりも術後の筋力回復が遅れる傾向がある。これは、女性の筋肉量が男性よりも少ないことが一因である
  • BMI:
    • BMIが30以上の患者は、術後の初期段階で筋力の低下が大きいが、長期的には筋力回復がより顕著であることが示されている。これは、過体重が筋力回復に対する負荷として作用するためである

リハビリテーションの影響

  • 外来専門指導リハビリテーション(OPGR):
    • OPGRを受けた患者は、術後3ヶ月までの早期段階で筋力の低下が少ないことが示されている。専門的な指導と個別化されたプログラムが効果的である
  • 通常ケア(UC):
    • 通常ケアを受けた患者は、筋力の低下が最も大きいことが示されている。標準的なリハビリテーションでは、個別のニーズに対応しきれないことが一因である

神経筋電気刺激(NMES)の有効性

  • NMESの追加:
    • NMESを追加したリハビリテーションは、標準的なリハビリテーションと比較して、特に術後早期において膝伸展筋力の回復に効果的である。長期的にはNMESと従来の筋力トレーニングの効果は類似している

臨床的意義

  • 早期リハビリテーションの重要性:
    • 早期のリハビリテーション、特に膝伸展筋の強化を目的としたプログラムは、術後の筋力回復に重要であることが示されている。早期からの積極的なリハビリテーションが、長期的な筋力回復に寄与する
  • 個別化されたリハビリテーション計画:
    • 年齢、性別、BMIなどの患者特性を考慮した個別化されたリハビリテーション計画が必要である。これにより、各患者の最適な回復が期待できる

まとめ

TKA後の膝伸展筋力の回復は、術後のリハビリテーションの質と量に大きく依存する。具体的な数値を基にしたリハビリテーション計画の策定は、患者の早期回復と長期的な筋力向上に寄与する。年齢、性別、BMIなどの個々の特性を考慮し、適切なリハビリテーションを行うことが重要である。

参考文献一覧

  1. Paravlic, A. H., Meulenberg, C. J., & Drole, K. (2022). The Time Course of Quadriceps Strength Recovery After Total Knee Arthroplasty Is Influenced by Body Mass Index, Sex, and Age of Patients: Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in Medicine.
  2. Maximum knee extension velocity without external load is a stronger determinant of gait function than quadriceps strength in the early postoperative period following total knee arthroplasty (2022-11-22).
  3. Does adding neuromuscular electrical stimulation to rehabilitation following total knee arthroplasty lead to a better quadriceps muscle strength recovery? A systematic review (2022-03-07).

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