関節原性抑制(AMI)は、全膝関節置換術(TKA)後のリハビリにおいて重要な課題です。AMIは、膝関節の損傷や手術後に起こる神経抑制で、特に大腿四頭筋の活性化を妨げます。このため、術後の筋力低下が顕著になり、リハビリの進行を妨げることがあります
AMIとは
•関節原性筋抑制 (Arthrogenic Muscle Inhibition, AMI) は、筋肉自体は損傷していないにもかかわらず、損傷した関節を囲む筋肉の反射的で継続的な筋抑制(Stroke 1984)
•関節可動域を制限し損傷した関節のさらなる損傷を防ぐ保護機構(Hopkins 2000)
AMIへのアプローチ
寒冷療法
•22名の外科術後患者(ACL損傷等)に20分間、氷袋クライオセラピー処置後、広筋内側(VM)のEMG活動が38%、最大等尺性膝伸展力が30%増加した(William 2019 )
•健常成人45名、実験的関節内に生理食塩水を注射して、大腿四頭筋の抑制を誘発。1.5 L の砕いた氷を30分。コントロールと比べて筋力変化なし(J Athl Train. 2006)
•TKA患者 20 名に1 日目には 30 分間の膝のアイシング。筋力、疼痛に変化なし(Holm 2012)
薬物療法
•TKA患者33名後にステロイドの投与で筋力、TUG、痛み、腫脹に変化なし。CRPは改善(Viktoria 2017)
•TKA患者50名にをトラネキサム酸の関節内注射し、術後1週でパテラ直上周径が減少した。(Ishida 2011)
•TKA患者50名にをトラネキサム酸の関節内注射をすると輸血率と総出血量の減少、モグロビン (Hb) の最大低下が少なくなり、排液量が少なくなり、術後の膝の痛みや膝の腫れが軽減され、入院期間が短縮され、短期的な満足度が高くなる( ZeYu 2014 )
関節ドレーン
•TKAにおける関節内閉鎖式吸引ドレーンは、関節内⾎腫の形成を防ぎ、創傷治癒を促進し、合併症を減らすことが⽬的(Long 2021)
•システマティックレビューでは、TKAに対するドレーンの使⽤は、感染率、失⾎、⾎腫、疼痛、深部静脈⾎栓症、可動域などに改善をもたらさないと報告(Si 2016) ( Manta 2021 )
•AMIに関して、両側TKA患者の片方の膝にドレーン、もう片方の膝に偽ドレーンを設置。大腿四頭筋の筋力は、術後2日目(p = 0.09)、2週間(p = 0.7)、6週間(p = 0.3)、3か月(p = 0.5)で有意差は認められなかった。膝伸展可動域は、術後2週間で有意に改善したがその他の期間は有意差なし。( Jennings 2019)
圧迫療法
•弾性ストッキングはDVT予防で使用されることが多いがDVTのリスクを軽減する十分なエビデンスはない。(Milinis 2018)
•88名のTKA後の患者に対し術後~翌朝まで弾性包帯で圧迫。腫脹や疼痛のコントロールには効果がない。(Munk 2013)
•7 件の RCT で、511 症例を追ったレビューでも疼痛、腫脹、出血量、ROM、合併症で有意差なし(Pei Liu 2020)
•TKA患者16 名3 週間の介入。圧迫衣服、リンパドレナージ、マッサージ、在宅運動プログラムを実施。術後3週間の腫脹改善(Carmichael 2022)
関節穿刺
・膝OA患者13名に関節穿刺を行い、関節液を吸引すると筋力が13パーセント改善した(Fahrer 1988)
・膝OA患者16名の吸引後、疼痛と筋力が改善した。(Rice 2015)
随意的な筋収縮
・健常者12名に4 週間の高負荷のスクワットを実施し、筋力、皮質ー脊髄性興奮性の向上、皮質抑制の低下を示した。( Weier 2012)
・健常人10名、関節内に生理食塩水を注射すると筋力が低下したが、最大負荷での運動を行った後では関節注射を行っても筋力は低下しなかった。( McNair 1994)
・TKA患者24名に対し10RMの運動を繰り返し行うと、筋活動が徐々に増加することが示された。 ( Mikkelsen 2016 ) TKA患者を高強度リハ(84名)と低強度(78名)に分類。筋力、ROM、6MDに有意な差はなかった。( Jakobsen 2014)
電気刺激療法
TKA患者66名に対しPOD2から6週間にわたり、2回/日NMESを実施。1年間術後の筋力に有意差があり、特に、TKA後3.5週間で、NMESの適用により大腿四頭筋の筋力低下が大幅に緩和された(対照群で67%低下、NMES群で40%低下)。(Lapsley 2012)
膝OA患者66名を通常運動療法群、運動強度電気群、感覚強度電気群の3群に割り付け。運動強度電気群( P =.001) および感覚強度電気群( P =.028) グループは、対照群よりも筋力が増強した。(Yoshida 2017)
TKA患者30名にを筋力増強練習群、運動+電気群にランダム化し週 2 回~ 3 回、6 週間の外来理学療法を実施。筋力に有意差なし。( Petterson 2009 )
止血帯(ターニケット)
ウサギの大腿部を止血帯で圧迫( 125 mm Hg と350mmHgで2時間)し、大腿四頭筋の筋力を評価。圧迫の 2 日後、大腿四頭筋の筋力は、125 mm Hg でコントロール群の 46%、350 mm Hg でコントロール群の 21% に減少した。( Mohler 1999 )
同日両側 TKAをうけた28名(56肢)の片側をターニケットで止血、もう片方をターニケットなしで手術した。大腿四頭筋の筋力は、止血なしのグループと比較して、止血ありグループでわずかに低く(グループ差 = 11.27 Nm、p = 0.01)、術後 3 ヵ月後でも有意差がみられた(グループ差 = 9.48 Nm 、p = 0.03)

コメント