1. 感覚障害に対する理学療法

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Passive Sensory Training

  • 定義
    患者が自発的に動かさず、外部からの刺激(触覚、温度、圧迫、電気刺激など)を受ける方法です。
  • 主な手法
    • 皮膚への軽擦、圧迫、振動刺激
      皮膚をなでたり、押したり、バイブレーターを用いて刺激する。
    • 温熱刺激
      温冷パックや温水・冷水を使って皮膚に温度刺激を与える。
    • 空気圧縮療法(pneumatic compression)
      空気圧で断続的に四肢を圧迫し、感覚入力を促進する。
    • 末梢神経電気刺激(peripheral nerve stimulation)
      低周波電流を皮膚表面から与えて感覚神経を刺激する。
  • 効果
    パッシブ感覚トレーニングは、上肢・下肢の活動性や感覚機能の改善に中等度の効果が認められています。特に温熱刺激や空気圧縮、末梢神経刺激は有効性が示唆されています

Active Sensory Training

  • 定義
    患者自身が能動的に感覚情報を識別・再学習する訓練です。
  • 主な手法
    • 感覚識別訓練(sensory discrimination training)
      さまざまな形状や素材、重さ、温度の物体を触り分ける。
    • 知覚学習(perceptual learning)
      例えば、目を閉じて物体の形や位置を当てるなど、感覚情報の識別能力を高める課題。
    • 感覚再訓練プログラム(sensory retraining program)
      触覚、位置覚、二点識別などの感覚課題を段階的に実施する。
  • 効果
    アクティブな感覚訓練は、研究数が限られているものの、感覚・運動機能の改善に有望であると報告されています。特に関節位置覚(JPS)や二点識別、軽度の触覚障害に対して効果がみられます

ハイブリッド型・補助機器を用いた訓練

  • ハプティックデバイスや拡張現実(AR)を用いた感覚フィードバック装置
    触覚や位置覚を強調するデバイスを用いた訓練も一部で報告されています

集中的感覚療法(Intensive Sensory Therapy)

  • 内容
    通常の理学療法・作業療法に加え、1回30分程度の感覚訓練を週5日、3週間集中的に実施。
  • 訓練例
    • 毎回、母指位置同定、指の移動、立体認知(ステレオグノーシス)などを繰り返す
  • 効果
    上肢機能、日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)の改善が認められています

その他の手法

  • ミラーセラピー(鏡療法)
    鏡を使い、健側の動きを患側の動きとして視覚的にフィードバックする方法ですが、感覚障害への効果は限定的とされています

2. 実施上のポイント

  • 訓練内容は個人の障害像に合わせて設定する必要がある
    感覚障害の種類(触覚、位置覚、二点識別など)や重症度、患者の認知機能、運動障害の有無に応じて訓練方法を選択することが推奨されています
  • 感覚訓練は運動訓練やADL訓練と併用することで、より高い効果が期待できる
  • 高品質なエビデンスはまだ限定的であり、今後さらなる研究が必要とされている

3. 参考文献一覧(英語システマティックレビュー)

  1. Chia FSF et al. “Sensory retraining of the leg after stroke: systematic review and meta-analysis.” J Rehabil Med. 2019.
  2. Turville ML et al. “Does Sensory Retraining Improve Sensation and Sensorimotor Function Following Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Front Neurosci. 2019.
  3. Muñoz-Gómez E et al. “Effects of mirror therapy on spasticity and sensory impairment in stroke survivors: A systematic review and meta-analysis.” PM&R. 2023.
  4. Fujita T et al. “Impact of Sensory Impairment on Improvement of Upper Limb Function in Subacute Stroke.” Progress in Rehabilitation Medicine. 2021.
  5. [Preprint] “The Effect of Sensory Therapy on Upper Extremity Functions, Daily Activity and Life Quality of Stroke Survivors: A Randomized Controlled Study.” medRxiv. 2024.

まとめ

  • パッシブ感覚訓練(皮膚刺激、温熱、電気刺激など)、アクティブ感覚訓練(識別課題、知覚学習)、集中的感覚療法、補助機器の利用などが推奨されます。
  • 感覚訓練は運動訓練やADL訓練と併用することで、より高い効果が期待できます。

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