パーキンソン病(PD)は、主に中脳の黒質におけるドーパミン産生ニューロンの減少によって引き起こされる進行性の神経変性疾患です。この病気は、振戦、固縮、動作の遅れ(ブラディキネジア)などの運動症状を特徴とし、進行すると姿勢反射障害(PI)も引き起こします。姿勢反射障害は、バランスを保つための自動反射が妨げられる状態で、転倒のリスクを高めます。
姿勢反射障害の生理学的メカニズム
- ドーパミンの欠乏:
パーキンソン病の主要な病理学的特徴は、黒質でのドーパミン産生ニューロンの減少です。ドーパミンは、運動制御において重要な役割を果たしており、その欠乏は基底核の機能不全を引き起こします。基底核は、運動の開始と調整に関与しており、ドーパミンの欠乏はこれらのプロセスを妨げます。 - 基底核の機能不全:
基底核は、姿勢制御においても重要な役割を果たします。基底核の直接経路と間接経路は、運動の促進と抑制を調整しますが、パーキンソン病ではこれらの経路が正常に機能しません。これにより、姿勢反射が適切に働かず、バランスを保つことが困難になります。 - 感覚情報の統合の障害:
姿勢制御には、視覚、前庭感覚、体性感覚の統合が必要です。パーキンソン病患者では、これらの感覚情報の統合がうまくいかず、姿勢反射が適切に機能しないことがあります。特に、前庭系の機能不全が報告されており、これが姿勢不安定性の一因となっています。 - 反射機能の低下:
パーキンソン病では、長潜時反射(LLR)の調整が困難になることが知られています。LLRは、姿勢を保つための重要な反射であり、その調整がうまくいかないと、バランスを崩しやすくなります。 - 筋力と筋トーヌスの変化:
パーキンソン病患者では、筋力の低下と筋トーヌスの異常が見られます。これにより、姿勢を保つための筋肉の反応が遅れたり、不十分になったりします。特に、体幹筋の弱化が姿勢反射障害に寄与します。
まとめ
パーキンソン病における姿勢反射障害は、ドーパミンの欠乏、基底核の機能不全、感覚情報の統合の障害、反射機能の低下、および筋力と筋トーヌスの変化など、複数の要因が絡み合って引き起こされます。これらのメカニズムを理解することで、より効果的な治療法の開発が期待されます。
参考文献
- Palakurthi, B., & Burugupally, S. P. (2023). Postural Instability in Parkinson’s Disease: A Review. PMC.
- StatPearls. (2023). Postural Instability – NCBI Bookshelf.
- Takakusaki, K., Takahashi, M., Noguchi, T., & Chiba, R. (2022). Neurophysiological mechanisms of gait disturbance in advanced Parkinson’s disease patients. Neurophysiology.

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